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制限

ここでこの定式化の潜在的な制限について言及しておく. 上の定式化は各アイドル期間が長くなることによって アイドル期間の数が大きく変化しないことを仮定している. これは, (1) ほとんど通信がない SPMD 型並列プログラム (2) レイテンシ隠蔽がない SPMD 型並列プログラム (3) 各プロセッサに多数の並列性がある非同期アプリケーション の合理的な近似になっている. 我々の定式化は(1)と(3)に対する合理的なモデルである. なぜならばそのようなアプリケーションは通信レイテンシに 関わらず非常に小さい n を示し, よって, アイドル期間の数はそれほど変わらないからである. さらに我々の定式化は(2)に対しても合理的なモデルである. なぜならば, レイテンシの隠蔽がない状況ではアイドル期間の数は要求 メッセージの数によって近似され, それは SPMD アプリケーションを 変化させないからである. 我々がまだ知らない, 我々の定式化でモデリングされる重要な アプリケーションは, 各プロセッサがプリフェッチングや 生産者主導通信のような技法や, 各プロセッサ内に 適度な数のスレッドを置くことでレイテンシを 隠蔽しようとする「適度にレイテンシに耐性がある」プログラムである. もしレイテンシへの耐性が通常の環境で完全にレイテンシを 隠蔽するのに十分なほど大きく, 局所ごみ集めのレイテンシを 隠蔽するほど大きくない場合は, システムは 同期ごみ集めモードで非常に小さい n を観測し, 実際には アプリケーションはレイテンシに耐性がないのに, 間違って 独立モードにスイッチしてしまうかもしれない. これは, 各プロセッサがほとんどすべての遠隔通信で まったくアイドル時間を持たないくらいに 同期モードのレイテンシが, ほとんど完全に隠蔽されるときにのみ 起こることに注意せよ. 一方, レイテンシの隠蔽が概して部分的である(つまり アプリケーションがレイテンシの隠蔽によってもなお短縮された アイドル期間を観測する)限り, 我々の定式化は正しく働く. そのようなアプリケーションの動作はさらなる解明のために 調査されるべきである.



Mitsubishi Research Institute,Inc.
Mon Feb 24 19:27:36 JST 1997