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TAGのオペレーションと格の対応
本研究においては, モデルを簡単にするために, 各文法における格の定義に次の
ような制約を用いた.
- 必須格は代入ノードによって定義される.
- 任意格は接合ノードによって定義される.
動詞のルールに関していえば, 表層構造において必ず存在しなければならない
格は, 代入されるべき非終端記号としてルール内に存在する.
図 5.2
においては, のルール中の``eat''以外の葉ノー
ドである非終端記号がそれである. このルールが構文木として成立するために
は, これら非終端記号に対して必ず代入操作をしなければならない. つまりこれ
は必須格であると定義しても差し支えがないのである.
同様に, のルール``passionately''は, の木に接合されな
くても のルールは構文木として成立することができる. つまりこれ
は任意格として定義することができる. ここでは前置詞を auxiliary tree, つ
まり接合によって得ることができる任意格としている. 必ず接合しなければな
らない, つまり必須格であるのにそれが前置詞句からなる構文も存在するかも
知れないが, ここでは簡単な文を対象としているので考えないでおく.
日本語の文法の特徴としては, 格マーカとして助詞を付加
することによって, 表層上格の語順が自由で, 最後に動詞がくるようになってい
る. これは
図 5.9
に示すように, 格マーカを auxiliary tree と
して定義すると, 語順が自由であることを表現できる.
図5.9: TAGによる日本語の表現
しかし, ここで述べた定義と, 日本語の表現に問題が生じる.
これまで任意の言語に対して, 動詞の必
須格と任意格は共通であると定義し, それはここまで保たれてきた. しかし, 格
マーカを auxiliary tree, つまり接合によって定義するならば, 本項で定義
したとおり, それはたとえ必須格であっても, 任意格とみなされてしまうのであ
る. これはモデルを簡単に定義しようとして生じた問題であり, 結果として
図5.10
のように日本語の動詞をここでの制約に見合うように再
定義し, 日本語の特徴である語順の自由を奪う形になる.
図5.10: 制約通りの日本語の表現
ここで提案するモデルは上述の制約通り, 必須格であるものは代入ノードで定
義することにする.
Mitsubishi Research Institute,Inc.
Mon Feb 24 19:32:21 JST 1997