多目的最適化GAでは, 定量的なアルゴリズム性能評価方法が未だ確立されていない. 少ない研究例の中のほとんどがグラフの図示により「パレート最適解の全体が一様に得 られた」と記述しているだけである. これらのグラフから読みとられるべき解の性質と して, 次の項目が挙げられる.

図5.17 パレート最適解集合の評価方法
 , 真のパレート最適解集合を
 , 真のパレート最適解集合を   とし, 個体 k の
  真のパレート最適解との誤差
  とし, 個体 k の
  真のパレート最適解との誤差   を, 最近接点とのユークリッド距離
  を, 最近接点とのユークリッド距離
    
 
とする. パレート最適個体集合の精度 E は誤差の平均値
  
 
で表される.
  
 
ただし, この方法には真のパレート最適解以外の個体は完全に無視されると いう欠点がある. この欠点を解消するためには, 各々のパレート最適個体を 最も近い真のパレート最適解に射影し, 小領域へのマッピングを行なうこと が必要である.
比喩的に言えば, 絶対精度はパレート最適個体集合の真のパレート最適解へ の収束度という縦の尺度であるのに対し, 絶対被覆度は最適個体集合の広が りという横の尺度であると考えられる. すなわち絶対精度と絶対被覆度は互 いに直交する尺度であり, 片方のみ優れた解が存在し得る.
  目的関数が2変数の場合は, 真のパレート解集合は曲線となるので, 曲線に
  沿った正規化座標   により, 各パレート最適個体の
  位置 (
  により, 各パレート最適個体の
  位置 (  ) を表現することができる. 
  さらに, この正規化座標上で次の相対累積度数分布曲線
 ) を表現することができる. 
  さらに, この正規化座標上で次の相対累積度数分布曲線   を考える.
  を考える.
  
  
 
  完全に一様な散らばりを示すのは, 各個体が等間隔に並ぶとき, すなわち個
  体数 N として, 正規化座標が   となるときである. このとき,
  となるときである. このとき,   の直線となる.  一方, すべての個体が一点
  の直線となる.  一方, すべての個体が一点   に集中して
  いる場合には,
  に集中して
  いる場合には,   で
  で   にジャンプする階段関数とな
  る.
  にジャンプする階段関数とな
  る.
  そこで, 多様性の評価関数として, この相対累積度数分布曲線 
    の経路長
  の経路長 
  
  
 
  を考えることができる.
  ただし, (  ) とする.
  つまり, 等間隔に並んだ場合には
 ) とする.
  つまり, 等間隔に並んだ場合には   , 一点集中の場合には
  L=2 となる. これを
 , 一点集中の場合には
  L=2 となる. これを   に正規化した次の関数
  に正規化した次の関数
  
  
 
を多様性の評価関数とする.
以上の4評価項目を例題の評価に用いたが, 真のパレート解が不明な場合や, 目的関数 が3変数以上の場合のために次の「相対精度」と「多様性(2)」も机上で検討した.
 (
 (  ) の相対的な優劣を比較することを考える. まず, 
  すべてのパレート最適個体集合を合成し, 中でパレート最適個体集合 P を再
  計算する. このとき元々のパレート最適個体集合 P
 ) の相対的な優劣を比較することを考える. まず, 
  すべてのパレート最適個体集合を合成し, 中でパレート最適個体集合 P を再
  計算する. このとき元々のパレート最適個体集合 P  で P に含まれる個体の
  割合を P
  で P に含まれる個体の
  割合を P  の相対精度 F(P
  の相対精度 F(P  とする.
  とする.
 に分割し, それぞれの小領域に含まれる個体の割合を
  に分割し, それぞれの小領域に含まれる個体の割合を   (=
 
  (=  ,
 ,   : 小領域
 : 小領域   に含まれる個体数)とする. この出現
  確率に対して情報量 H が
  に含まれる個体数)とする. この出現
  確率に対して情報量 H が
    
 
  と定義できる. 小領域の数を M とすると, 情報エントロピーの最大値
    はす
  べての
  はす
  べての   が等しい場合 (
  が等しい場合 (  ) なので,
 ) なので,
  
  
 
  である. 多様性の評価関数   を情報エントロピーの最大値に対する割合
  を情報エントロピーの最大値に対する割合
  
  
 
と定義する. ここでも小領域のサイズが問題となるが, 現時点では試行錯 誤で決定するものとする.