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並列プロセッサ上の処理速度の比較実験

前節でのパラメータをもとに実験を行なった. 実験結果をグラフで出力したも のを 図5.16 , 図5.17 に示す. これはエージェント数ごとに会話数をまとめ たグラフであり, 表5.3 における40が 図5.16 , 64が 図5.17 に対応している.

グラフ全体を見ると, プロセッサ数が増えるごとに演算時間が 減少していることが分かる. また, 途中まで単調減少であったのに, あるプロセッ サ数まで進むと, 減少具合が鈍くなり, ついには単調減少でなくなってしまうと いう点も2つのグラフに共通している. これはオブジェクト指向言語でいうと ころのオブジェクトがプロセッサ依存ということが大きく影響している. つまり, エージェントもプロセッサ依存なのである. プロセッサ数と処理時間の関係を以下に示す. ここで処理するプロセッサ台数をnum(PE), エージェント数をnum(agt)と定 義する.

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使用したプロセッサ台数がエージェント数よりも少ない場合, エージェントを 複数抱えるプロセッサが存在することになる. この場合は当然ひとつのプロセッ サにエージェントが少ない方が良いわけで, 理想は1プロセッサにつき1エー ジェントが最良のケースと考えることができ, そこへ向かってグラフは単調減 少していくのである.
num(PE)<num(agt)
プロセッサ台数がエージェント数に近づいていくにしたがって, 処理速度の伸 び悩みが発生する. これは1プロセッサが抱える平均エージェント数がプロセッ サ数が1つ増えてもたいして変わらなくなってきたからである.
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プロセッサ台数がエージェント数を上回ると, もはや処理速度が向上する要素 は何もなくなる. したがって, 処理速度が早くならないどころか, 使用しないプ ロセッサまで管理しなければならなくなり, 結果としてプロセッサが増えるご とに遅くなっていくのである. しかし, この増加具合は処理時間に対する誤差を 大きく下回っているため, このグラフには出て来ない.

図5.16 , 図5.17 はエージェント数が固定で, エージェントの会話数に よるグラフである. これを見ると会話数が増えるごとに処理時間は増える. では次に会話数が固定でエージェント数による処理時間の違いを 図5.18 に示す. これは会話数を40に固定して, エージェント 数が40と64に関して比較をしたものである. 当然の結果ながら, エージェント数を増やしたほうが処理時間がかかることが 確認された. 図5.19 はプロセッサ数の増加にともない, エージェント数も 増やしたグラフである. つまりnum(PE)=num(agt)である. 会話数は10として いる. このグラフを見ると, 処理時間はほぼ比例している. 本節の実験として, 並列プログラムによる並列プロセッサの処理速度の比較実 験を行なった. これは 並列オブジェクト指向言語 ABCL/f に対する実験であ る. ここで得られた結果は処理効率について述べることはできるが, 言語獲得の 見地からは何も評価はできない. 何故ならば, 各エージェントがエージェント内, つまり割り当てられているプロセッサ内で行なっているプロセスはただ単に文 生成とパースを繰り返すだけだからである. ここでの実験によって, ABCL/f によって実装したプログラムが, 並列性 による処理の高速化が確認できた. これによって次節で述べる学習機構を備え たエージェントの高速処理に十分期待ができる.

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図5.16: プロセッサ台数に対する処理速度(1)

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図5.17: プロセッサ台数に対する処理速度(2)

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図5.18: プロセッサ台数に対する処理速度(3)

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図5.19: nプロセッサ:nエージェントの処理速度の変化



Mitsubishi Research Institute,Inc.
Mon Feb 24 19:32:21 JST 1997